(74) 【杜甫】 712-770
李白の「詩仙」に対し杜甫は「詩聖」と言われ、その詩は雄大にして悲壮、作品は千五百篇にも及んでいます。
「春望」 杜甫
国破れて山河在り
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙を濺(そそ)ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙を濺(そそ)ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
烽火(ほうか)三月に連なり
家書萬金に抵(あた)る
白頭を掻かけば更に短く
渾(す)べて簪(しん)に勝(た)えざらんと欲す
家書萬金に抵(あた)る
白頭を掻かけば更に短く
渾(す)べて簪(しん)に勝(た)えざらんと欲す
その詩が憂愁に富むのはまさにそのためである。
しかしその憂愁が生まれたのは、その為ばかりではない。
その誠実な人柄ゆえに、世の中の不合理、不公正をに対する誠実な憤りが常にその心にあった。
そうして常に虐げられた者の友であろうとしたからである。
「語、もし人を驚かさずんば死すとも休(や)まず」
と自ら言う通り、その表現は命がけであった。
「登高」 杜甫
風急に天高くして 猿嘯(えんしょう)哀し
渚(なぎさ)清く 沙(すな)白くして 鳥飛び廻る
無辺の落木 蕭蕭(しょうしょう)として下り
不尽の長江 滾滾(こんこん)として来る
渚(なぎさ)清く 沙(すな)白くして 鳥飛び廻る
無辺の落木 蕭蕭(しょうしょう)として下り
不尽の長江 滾滾(こんこん)として来る
万里悲秋 常に客となり
百年多病 独り台に登る
艱難 苦(はなは)だ恨む 繁霜(はんそう)の鬢(びん)
潦倒(ろうとう) 新たに停(とど)む 濁酒の杯