(94) アヤメとカキツバタ
○ 「あやめ」
【アヤメには紫色の花びらに網目模様があります】
あやめ(文目)は山野の乾いたところに生育しているアヤメ科の多年草です。
葉は直立していて高さは40~60cmぐらい。花は5月ごろに径8cmほどの紫色の花を1~3個付けます。
葉は直立していて高さは40~60cmぐらい。花は5月ごろに径8cmほどの紫色の花を1~3個付けます。
前の方に垂れ下がった花びらに網目模様があるのが特徴です。
○ 「杜若・かきつばた」
【かきつばたには紫色の花びらに、網目模様でなく、黄色い筋が一本あるだけです】
カキツバタ は「杜若」とか「燕子花」と書きますが、日本や朝鮮、満州などの沼沢地に自生するアヤメ科の多年草です
むかし、衣に色を摺りつけて使ったので「書き付け花」と言っていたのが「カキツバタ」となったと言われています。アヤメより少し遅く、6月ごろに紫色の花を開きますが、園芸種には白や紫に斑にある花もあるようです。
古くから美しさのたとえに「いずれアヤメかカキツバタ」と言う諺がありますが、両者はよく似ています。
その違いは「アヤメ」の葉の幅が1センチなのに対し「カキツバタ」の葉の幅は3センチほどあります。また、「あやめ」の花びらには網目模様がありますが、「かきつばた」の花びらには縦に黄色い筋が一本あるだけです。
息つめて莟(つぼみ)をきるやかきつばた 梅室
*昔、日本一の美男子と謳われた在原業平(ありひらのなりひら)が、都に愛しい妻を残して東へ下る途中、カキツバタの名所・三河の国の「八橋」で昼飯を食べているとき、従者が「カキツバタと言う五文字をそれぞれの句の上に置いて旅の心を歌に作ってください」と頼みました。
そこで業平は(かーきーつーばーた)を入れて
からころも きつつなれにし つましあれば
はるばるきぬる 旅をしぞ思う
はるばるきぬる 旅をしぞ思う
と、詠んだので
「みな人、干飯(ほしい)の上に涙おとしてほとびけり」 と、伊勢物語に書いてあります。
「みな人、干飯(ほしい)の上に涙おとしてほとびけり」 と、伊勢物語に書いてあります。
「ほとびる」とは水分を含んで膨れる。ふやける。と言う意味ですが、この潤びるという言葉は方言とばかり思っていましたが、標準語だったんですね。
子供の頃、何時までも風呂に入っていると、母から 「早う上がらんば、ほとびてしまうばい」 と、叱られたことがあります。